フラッシュバック等解離性障害を伴うASDについてのメカニズムと職場での対応
2025/10/16
「定型者の場合、トラウマは経験の連続性を切断するものになるのに対し、ASDでは経験が連続性を獲得し始めると過去の出来事がトラウマとなる」(「自閉症スペクトラムの精神病理」(内海健)
内海健先生の著作は、大変にわかりやすい。文学や芸術にも精通されているからだろうか、脳科学では、池谷裕二先生がいらっしゃるが、初学者には、まずお勧めしたい著者たちだ。
大学時代に、双極性障害に関する内海先生の著作を拝読して、従来の類型と違う説を直感的に提示されたことに鳥肌が立ったが、こちらの自閉症スペクトラムに関する本も素晴らしい。
一冊で、十数回の驚きと、数回の笑いがあり、特に、「定型者の場合、トラウマは経験の連続性を切断するものになるのに対し、ASDでは経験が連続性を獲得し始めると過去の出来事がトラウマとなる」という言葉が最も印象的だった。
事業主として、ASDの方にOJTをしたことがある。仕事を「幅のある時間」として認知しておらず、仕事時間中に、場当たり的な言動を繰り返していた。
就労規則に則って処分をする事例だったが、論語にある「之を導くに政を以てし、之を斉うるに刑を以てすれば、民免れて恥ずること無し。之を導くに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥ありて且つ格る。」という言葉から、懲戒処分ではなく、なんとか社会人としての自覚をもって仕事に励んでもらえれば(というより就労時間中には、仕事をしてもらえれば)と思っていた。
内海先生は、「微分的時間」とおっしゃっていたが、ASDは刹那的な時間に生きてしまっている。だから、ヒアリングとフィードバックにより、ストーリーとして時間を把握してもらえればという計画を立てて実行した。
すると、突如、従業員は、トラウマが発症してしまった。連続性を獲得してしまったことによって、過去の出来事がフラッシュバック等で表れてしまったようだ。そして、OJTにおいて、連続性を教えてしまった上司をストレス源として毛嫌いをし、退職をしてしまった。
以上のことから、ASDの方にOJTによって、連続性という自己に目覚めさせてしまうのは、論語で言う「礼を以ってすれば、恥ありて」の「恥」について、職場で過ごした時間以前の様々な思い出がフラッシュバックしてしまい、業務の継続が困難になってしまったようだ。
ASDの方が解離性障害のような症状を呈すことは知っていたが、そのメカニズムを知らなかったのは、私の研究不足だった。
以後、ASDの方には、職場での業務を通して自己同一性を身に着けることで、過去の出来事がフラッシュバックする危険があることを告知して、就職をする前に就労移行支援施設でご準備をしてもらうことにしている。
幸いにして、高崎には、「ファシリカ」や「ディーキャリア」など、いい施設がたくさんあるし、国の制度も充実している。発達は、遅くてもよいのだ。世の中には、走るのが速い人もいれば、遅い人もいる。大事なのは、ゴールをすることだ。
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