ダルクの専門家の視点 薬物依存症について
2025/09/09
高校生のころに、友人から勧められて、石田衣良の「池袋ウェストゲートパーク」通称IWGPという、思春期の少年少女たちにある社会の闇を解決する小説を読みました。そこで、史上最悪の少年犯罪とも言われる「女子高生コンクリート詰め殺人事件」を知りました。
当時は、何冊かそこに関する記事を読みましたが、あまり腑に落ちるものがありませんでした。そのまま十数年が経ち…ふと書店で手に取ったこの本の解説がとても納得できたため、レビューいたします。
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以下、東京・日暮里に本部のあるDARC(ダルク/ドラッグ・アディクション・リハビリテーション・センター)の代表である近藤恒夫氏の発言です。
「彼(主犯格)は自分は万能感を持った人間であるということを信じ込んでいる。だから、まわりの人間はみんなバカだと思っている。これは薬物依存の共通した発想なんですよ。自分を正当化しなくてはならない。次第とそういうふうになってしまう。自分はなにも悪くないんだという。否認の変形と言ってもいい。つまり、そうしてクスリを使える理由づけをどんどんつくっていくわけです。自分は正しくて、相手はバカだという、正しくないんだという。そういう論理が成り立たないといけなくなる。これは犯罪だとか、悪いことをやっているんだとか、そういう意識を最初は持っていたかもしれない。でも、だんだんそれが大きくなってくると、正当化のために余計なことを背負うことになる。バカをつくんなきゃいけない。自分が神だと思っちゃう妄想を抱いたときにはそうなる」
要するに、薬をしているというやましさを、他人を見下すことに転嫁する。薬を続けることで、陽性症状(ないものを作り出す)的になっていくのです。
「主犯格は完全に薬物依存になって、そういう状態になっていると思う。一人ひとりはそんなに凶悪な少年たちじゃないと思うんですよ。でも、クスリっていうのは人格をどんどん破壊していって、自己中心の人格を形成していく。自己中心にならないとそんなことできないでしょう。それがエスカレートしていって、そうするとなにがいちばん怖いかというと、自分の人生や命も大事にしなくなるし、他人の命も大事だってことがわからなくなる。生命に対する意識が破壊される」
薬物依存は、物質と精神の二元論のうち、物質に精神が支配されることで、精神のウェイトが小さくなる。物質が肉体をもむしばみ始めることで、生命に対する意識が破壊されるのかもしれません。
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「そういう少年が良く変わっていくためには、前に言った4つ(編集部註:自由、成長、創造性、善意)を取り戻すことが大切。でも、それは少年院や刑務所ではだめ。自由のないところでは、自由を選択できないんだから。自由とか創造性とかないところでは反省にならない。反省させられるハメになったとしか思わない。ベストな方法とは、彼らがクスリを使ったときの年齢に戻らなくてはいけない。それが彼らの人生のスタート。その年齢からやり直すことです。」
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以前に、薬物依存症の方の採用事例を耳にしたことがあります。どうやら、面接で薬物依存の過去を隠されて、期せずして雇ってしまったそうでした。
その会社は、自由や創造性を尊重し、依存症からの回復を支援する環境を整えていた点が印象的でした。
ところが、その方は、薬物を使った年齢に戻ってしまったようでした。その会社に対する批判の根拠として「お母さんもそう言ってる」と発言されたそうです。
私は、その話をお聞きしたとき、20代前半の方のご発言だと思っていました。驚くべきことに、その方は中年だったそうです。
成人後数十年経っても「母親の言葉」を行動の根拠にしてしまうことがある。これは、成長の停止を如実に示すエピソードとして非常に印象的でした。
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今後も、薬物依存症を隠して採用面接を突破する方が、若干名は出てくるでしょう。
そのため、「反抗的な高校生」を想定した就労規則も必要になるかもしれません。また、2010年代以降には「無気力な高校生」も出てきており、その対応も不可欠だと思われます。
ダルクの代表がおっしゃったように、薬物依存症の方は、その時点で成長が止まっている。だからこそ、現時点では、精神障がい者雇用のみならず、社会全体でどう支えていくかを考える必要があると痛感しました。
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